ウッソー! コレステロール値 「高い方が死亡率低い」??

コレステロール値 「高い方が死亡率低い」

 日本脂質栄養学会で研究成果発表
2010年9月3日   提供:毎日新聞社
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/09/03/124948/?pageFrom=m3.com
コレステロール値:「高い方が死亡率低い」 

日本脂質栄養学会で研究成果発表 /富山

 

 ◇きょうから日本脂質栄養学会、ガイドライン策定へ

 動脈硬化の原因の一つとされるコレステロールについて、日本脂質栄養学会(理事長=浜崎智仁・富山大学和漢医薬学総合研究所教授)が「総コレステロール値またはLDL(悪玉)コレステロール値が高い方が総死亡率が低い」とする研究成果をまとめた。3、4日に愛知県犬山市で開かれる第19回日本脂質栄養学会で発表する。【青山郁子】

 日本では狭心症などの持病がない場合、血中のLDLコレステロール値が140ミリグラム以上で高脂血症と診断される。日本動脈硬化学会が07年に定めたもので、厚生労働省や多くの医療現場が基準値として採用している。

 浜崎教授らは、東海大学が神奈川県伊勢原市の老人基本健診受診者(男性8340人、女性1万3591人)を平均7・1年間追跡した調査などを分析。男性ではLDLコレステロール値が79以下の人より、100-159の人の方が死亡率が低く、女性ではどのレベルでもほとんど差がないとの結果を得た。

 また、茨城県などが冠動脈疾患や脳卒中の既往歴のない男女約9万人(40-79歳)を対象に平均10・3年間追跡した調査でも、冠動脈疾患死とコレステロール値との因果関係はみられなかった。

 これを受け脂質栄養学会は昨秋、浜崎教授を委員長に「長寿のためのコレステロールガイドライン策定委員会」を設置。「特別な場合を除き、動脈硬化性疾患予防に(コレステロール値)低下目的の投薬は不適切」などとする内容を盛り込むことを検討している。特に投薬治療を受けている患者の約6割を占める女性は、閉経後に平均値で30-40ミリグラムは上昇するとされ、基準値に男女差がないことも問題視している。

 今後は各方面の意見を聴き、来年度に学会として正式なガイドラインを発表する予定。

 浜崎教授は「日本でコレステロール値を下げる薬の売り上げは年間約2500億円。関連医療費も含めると7500億円を上回る。この中には多額の税金も投入されており、無駄と思われる投薬はなくすべきだ」と話している。

・・・

以前にもこのような報告は何度かありましたので、さほど真剣に読む気がしないのですが、コレステロールを治療中の方で、初めてお耳にする方にとっては気になる情報だと思います。

若干ではありますが、私なりの考察を加えておきます。

1.まずは調査対象グループの設定について

A群:LDLコレステロール値が79mg/dl以下の男性とB群:LDLコレステロール100-159mg/dlの男性という分け方です。見るとすぐに分かりますが、LDLコレステロール80-99mg/dlの男性のデータがありません。意図的にこの間のデータを隠しているのではないかと勘ぐりたくなります。

さらに、

未治療で、A群のように、LDLコレステロール値が79mg/dl以下、というのは、あまりお目にかかれないほどの低値です。つまり、A群は病的なヒトを含んでいる可能性が高いということです。一方、B群は、LDLコレステロール100-159mg/dlであり、食欲も大盛でいたって健康な集団といえるでしょう。

よって、結語としては

「100-159の人の方が死亡率が低い」のではなく、「LDLコレステロール値が79mg/dl以下の(病的な)男性の方が死亡率が高い」

といった方が正確ではないかと思われます。

2.冠動脈疾患死とコレステロール値との因果関係について

良くこの記事を読んで頂きたい、何と書いてあるか。

冠動脈疾患死、と書いてあります。

>冠動脈疾患死
>疾患死
>死

心血管イベントの頻度とコレステロール値との相関性について、検討したのではないのです。心筋梗塞などによる心臓死と高コレステロール血症との関係については因果関係はなかったと書いています。このような報告は前からあり、目新しい報告ではありません。

そうではなくて、

高LDLコレステロール血症を放置すると、心血管イベント(狭心症や心筋梗塞の発症)頻度は明らかに増加することはこれまでの研究からすでに明らかにされています。

心筋梗塞などによる心臓死と高コレステロール血症との関係については、以前より因果関係がないことは証明されており、新しい知見とは言えません。

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