肺結核

中高一貫校で35人が結核に集団感染―東京都

 東京都は3月8日、武蔵野市内の私立中高一貫校で生徒、教員合わせて35人が結核に集団感染したと発表した。都では、中学2年の生徒が発症から3か月後の昨年9月以降に受診した4医療機関が結核を疑わず、エックス線検査をしなかったため診断が遅れ、感染を拡大させたとみている。

 都によると、中学2年の生徒は昨年6月ごろから発熱やせきなどの症状があり、徐々に増悪。9-11月に5医療機関を受診したが、4医療機関では結核を疑わず、11月に感染性肺結核と判明するまで生徒は登校を続けた。
 35人の内訳は、発病者9人、感染者26人。
 結核は、感染者が発病する確率は通常10%程度で、潜伏期間は3か月から2年。

 都では、4医療機関がエックス線検査を実施せず、感染性肺結核の診断が遅れたことが集団感染の原因の1つとみて、8日中に都医師会を通じて都内の医療機関に通知を発出。2週間以上持続する発熱やせきなどが臨床症状だとした上で、「症状だけでは結核の診断はできない」として、「胸部エックス線検査などから結核を疑うことが大切である」と注意を呼び掛けている。

CBニュースより

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>発症から3か月後の昨年9月以降に受診した4医療機関が結核を疑わず

と書いてあります。

この時期に咳が続く疾患でまず疑うべきは、やはり、感冒症候群、急性気管支炎、マイコプラズマ感染症や百日咳などの急性感染症性疾患でしょう。成人男性で喫煙歴のある患者さんの場合は、肺炎や肺癌などの可能性をも考えて、胸部レントゲン検査を躊躇することはないと思いますが、中高生や若い女性に対して胸部レントゲン検査というのはやはり躊躇します。どうしてかというと、レントゲンで被爆するからです。

結核が疑がわれ、しかも早急に診断する必要がある場合には、胸部レントゲン検査も大切ですが、見落としを憂慮し、塗抹鏡検(チール・ニールセン染色)や結核菌PCRを行うと、より早期にしかも正確に診断できると思われます。下の「5.検査所見」にもそのように書いてあります。

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肺結核をWikipediaで調べてみましょう。

1.概要

(前略)

感染者の、大部分は症状が出る事は少なく、無症候性、潜伏感染が一般的である。潜伏感染の約10分の1が最終的に症状が発生し、治療を行わない場合感染者の半分が死亡する。

(中略)

かつて日本では結核は国民病・亡国病とまで言われるほど猛威をふるった。第二次世界大戦後、結核予防法(昭和26年3月31日法律第96号)が制定され、抗生物質を用いた化学療法の普及などによって激減をみた。しかし他の先進工業国に比べて感染率と死亡率は依然高い状態である。2001年5月に20名の集団感染が発生した大学で診断を実施した教授が「関心の低下も一因」と指摘する[3]など、結核の危険性に対する日本国民の関心低下が指摘[4]されており、今日では逆に「結核は過去の病気ではない」というスローガンで注意の喚起が叫ばれている。

2.BCG接種

予防策としてBCG接種があるが、その実施状況は国により異なる。日本では実施されている。アメリカでは行われていない。ヨーロッパ諸国では行われている国もあるが、フランスなど中止した国もある。BCGを行うことのメリットは、小児の結核性髄膜炎と粟粒結核の頻度を有意に減少させることにある(有効性 80%)。しかし、成人の結核症を減少させるという根拠はない(有効性 50%)。いっぽうデメリットとしては、ツベルクリン反応を陽性化させてしまうため結核の診断が遅れることにある。結核菌の頻度が低い地域ではBCGを行うメリットは低く、むしろデメリットが大きいと考えられる。BCGを中止したスウェーデン、旧東ドイツ、チェコスロバキアなどは、中止後小児結核が増加した経緯がある。結核菌の頻度が高い(特に家族間感染が多い)日本などの地域では今後もBCGは行われていくと思われる。

かつて日本ではまずツベルクリン反応検査を行い、陰性反応が出た者のみにBCG接種を行う形をとっていたが、2005年4月1日に結核予防法が改定され、ツベルクリン反応検査を行わずに全員にBCG接種を行う形になった。

(後略)

3.総論

(略)

4.症状

当初は全身倦怠感、食欲不振、体重減少、37℃前後の微熱が長期間にわたって続く、就寝中に大量の汗をかく等非特異的であり、咳嗽(痰は伴うことも伴わないこともあり、また血痰を伴うことがある)が疾患の進行にしたがって発症してくる。昔は「不治の病」「難病」と呼ばれていた。

5.検査所見

喀痰塗抹検査(チール・ニールセン染色)は喀痰中の抗酸菌の有無および排菌量をみる検査であり、まず行うべき方法である。これまで喀痰中の排菌量はガフキー号数で表記されてきた。新結核菌検査指針では検出菌数を1+,2+,3+で表すこととなった。(±はガフキー1号,1+は2号,2+は5号,3+は9号に相当。)塗抹検査では、結核菌か非結核性抗酸菌かの同定はできない。菌の同定および薬剤耐性を調べるには喀痰培養検査を行うが、結核菌は培養による繁殖が遅く、3-6週間かかってしまうため早期診断には適さない。早期診断には喀痰の結核菌DNAのPCR法が有用である。感度・特異度が高く日本でも普及してきている。

(以下省略)

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2のBCG接種の項を良くお読みになって下さい。

面白いことが書かれています。

「私、咳と微熱が続いているし、結核じゃないかしら」と心配な方は、医師に相談して下さい。そしてレントゲン検査を催促して見て下さい。それでレントゲン検査を拒む医師はひとりもいないと思いますが・・・。

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